平成19年度においては、下記のとおりの内航海運対策を実施するものとする。
第一 対策の目標
内航海運業の経営の安定と地位の向上を目的として、輸送量の変化、物流効
率化の進展に伴う船腹需要への影響等に的確に対応していくため、内航海運暫
定措置事業を円滑かつ着実に実施するとともに、公正で開かれた内航海運市場
の構築、内航船員対策、内航海運事業者の経営基盤強化等の諸対策を推進す
ることにより、内航海運業界が直面している厳しい経営環境の打開に一致団結し
て当たる。
第二 目標実現の方法
T 内航海運暫定措置事業の円滑かつ着実な実施進
1.解撤等交付金の交付は、「資金管理計画の適正化方策に関する理事会決定」
に基づき策定する上・下半期毎の資金管理計画により適正に実施する。
交付金の未交付者に対する対応策については、引き続き検討する。
2.暫定措置事業のあり方について長期的な視点に立って検討する。
3.内航海運暫定措置事業の現況等を組合員に周知するため、交付金予定交付
額及び処理完了届受付状況、積載トン数の正常化処理状況、理事会・委員会
決定事項及び関連法令・通達等の各種情報を「e―内航」に掲載すること等によ
り情報開示に努める。
U 経営基盤強化対策の推進
内航海運業の構造改善を推進するため、以下の事項を骨子とする経営基盤強
化対策を実施する。
1.運賃・用船料の適正化
船腹需給の適正化対策を基本としつつ、運賃・用船料の変動を十分に把握し、
運賃・用船料の修復に資するため、以下の事項を推進する。
@ 船腹需給の適正化
内航海運暫定措置事業の着実な実施を通じて過剰船腹の船腹需給の適正化
に努める。
A 適正運賃・用船料の確保
環境・安全規制の強化、燃料油価格、船員費の増加、建造船価の高騰等のコス
ト増に対応し、代替建造を促進し安全輸送を確保するためには、運賃・用船料の
修復が急務である。そのため運賃・用船料の修復について荷主業界等へ働きか
けるとともに、総連合会がとりまとめたパンフレット等を活用し、広報活動を通じ関
係者の理解と協力が得られるよう努める。
B 船舶・運航コストスケールの活用
組合員の事業運営に資するため、輸送量、燃料油高騰の運賃転嫁等用船料の
実態を調査するとともに、運輸政策研究機構が実施した内航海運コスト分析調査
報告について、内航海運業界の健全な発展のため関係者に有効に活用されるよ
う周知に努める。
また、輸送船については内航タンカースケールの活用も図り、適正な運賃・用船
料への修復の必要性について関係者の理解と協力が得られるよう努める。
2.経営合理化等の推進
@ 「内航海運事業者の協業化の栞」及び「経営合理化に向けて―内航海運事業
者の明るい未来―」の活用等により、地方海運組合等と連携して経営合理化の
促進を図る。
A
組合員からの事業経営に関する相談事に対応するため、「組合員経営相談
室」の活用を図る。
3.船舶建造の円滑化
@
国土交通省の内航船舶の代替建造促進に関する懇談会報告書に基づき策定
された、内航船舶の代替建造推進アクションプランの推進について、引き続き積
極的に参画する。
A 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の補助金制度を
活用し、内航船の省エネルギー設備・技術の導入を図り、内航船舶の近代化が
広く図られるよう周知徹底に努める。
4.船員の安定的確保
最近における船舶航行の安全確保に関する規制・基準の強化に対応した安全
運航管理体制の確立、海技資格取得に向けた内航船員教育の充実、今後、急速
に進行すると予測される高齢者船員の大量退職に対応する新規若年船員の確保
等、船員雇用を取り巻く大きな環境の変化に対処するため、次の諸対策を実施す
る。
(1) 労働環境の改善
@
国の第8次船員災害防止基本計画の最終年度にあたり、平成19年度船員災
害防止実施計画に則り、船員の災害防止及び安全の確保等管理指導の周知
徹底により、船員労働環境の改善に努める。
A
新ILO海事労働条約の国内法化に伴い、関係する法令・規則の改定に際し
て、内航船員の労働環境改善に資する方向にて検討実施されるよう対応を図
る。
(2) 若年船員雇用の促進
次により若年船員の雇用の促進を図る。
@ 国と共同し(財)日本船員福利雇用促進センターを介して実施する内航若年船
員トライアル雇用事業の推進
A 若年船員OJT助成制度の拡充推進
B 海上技術学校・海上技術短期大学校学校等に対する内航船乗船体験の協力
支援
C
海上技術学校・海上技術短期大学校等が実施する船員職業紹介事業の活用
D
各地の内航船員確保対策協議会における活動の支援
(3) 優良な船員の確保
前項によるほか、次により優良な船員の確保を図る。
@ 船員派遣事業の有効活用
A (財)日本船員福利雇用促進センターが実施する船員求人情報ネット等の活用
(4) 船員教育の充実
次の施策を推進する。
@
船員教育機関卒業者以外の一般若年者からの新規就業者に対する海技教育
機構が実施する新6級海技士(航海)課程への支援
A (財)海技教育財団等が実施する海上技術学校・海上技術短期大学校学生の
募集及び教育充実等のための支援
B
新規内航船員の新たな養成方法の拡充及び教育に関し、行政当局に対して、
必要となる施策を要請
5.輸送の効率化と安全の確保
@
船舶の技術革新等に伴い、海事関係法令の是正を必要とするものについて
は、法令の改正を行政当局に要請する。船舶の技術開発、普及は初期投資を
必要とするため、新技術を導入する事業者への特典付与等を検討し、必要に応
じ行政当局に要請する。
また、内航船舶の安全確保の観点から、損傷時復原性、バラストタンクの塗装
基準等の国内法への取り入れ及び次世代航海システムの検討に積極的に関与
していく。
A
内航ビジョン等に基づく新技術、新システムの開発協力の一つとしても船舶主
機関を含む高度船舶安全管理システムの実証実験を通じて、船舶設備の高度
化による省力化の可能性と、それに伴う乗り組み体制の見直しについて検討を
進める。
B
海上輸送、港湾荷役、陸上輸送との連携による輸送全体の効率化について総
連合会が実施した「内航海運から見た素材産業の物流コスト効率化に関する調
査」及び「新規物流に関する調査」等の研究の成果を踏まえ、安全の確保と海
上輸送の効率化コストの削減を推進する。そのための関係者の理解と協力を引
き続き得るよう努める。
C
内航船舶の安全運航の確保と海洋環境保全の観点から作成した、「任意ISM
コードの取得へ向けて」を活用し、本年度も啓蒙活動に努める。
D
平成17年4月1日に制定された「運航管理規程」は、平成18年10月1日よ
り、陸・海・空の共通した輸送の安全の確保を目的として「安全管理規程」に衣替
えされた。これに伴い、同規程が広く運用面で輸送事業者に定着するよう啓蒙
活動に努める。
E
内航海運における使用燃料油、潤滑油に関する実態調査報告書を作成し、技
術面からの周知徹底を通じ安全運航に努める。
6.公正な取引環境の整備
@
下請代金支払遅延等防止法及び独占禁止法による特殊指定「特定荷主が物
品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」並びに下請中
小企業振興法について周知徹底に努めるとともに、不公正な取引にすする事例
に関し、積極的に公正取引委員会または不公正取引防止委員会へ相談するよ
う、傘下組合員への周知に努める。また、独占禁止法上問題となった事例につ
いてはその改善を支援するとともに、同種の事案の再発防止に努める。
A
運送契約書式の改正作業を行っている、日本海運集会所の内航運送基本契
約書書式制定審議小委員会に参画し、公正な取引の観点から適正な運送契約
となるように努める。
また、制定後は、改定内容及び適正な契約の励行について周知及び啓蒙活
動に努める。
7.共済・共同事業の推進等
@ 内航海運業の経営の安定・効率性の向上及び内航海運の社会的使命の達成
を図るため、情報システム関連事業をはじめとする共済・共同事業の推進・検討
を行う。
A 情報システム関連事業については、「e―内航」のトピックス及びライブラリーを
通じた速やかな情報の提供と船舶売買情報システム、貨物輸送情報システム
及び用船情報システムの各情報システム等の利用促進に努めるとともに、新た
な会員の拡充に努める。
V その他の諸対策
1.適切な税制措置の確保
内航海運事業者の経営に資する以下の税制措置について国に要請する。
@
内航船舶の用に供する燃料油に係る石油税の減免または還付に関する特例
措置の創設
A 内航海運暫定措置事業導入に係る交付金の圧縮記帳または準備金制度の
創設
B
中小企業投資促進税制の期限延長(中小事業者が内航船舶を取得した場合
の特別償却及び税額控除制度)
C 代替建造促進策としての税制措置の創設
D 新たな税負担となる環境税の導入に反対
E その他
・内航船舶に係る固定資産税の特例措置の改正
・シャーシに関する税制の特例措置の創設
・法人事業税の外形標準課税に係る特例措置の創設
2.不況対策
(社)船舶整備共有船主協会に協力し、鉄道・運輸機構の共有比率の引き上
げ、同機構の新船建造に係る適用金利の軽減措置等を国土交通省及び同機構
に要請する。
3.環境対策
内航海運における環境対策としては、二酸化炭素削減等を目的としたモーダル
シフトの推進等に代表される国内環境対策と海洋環境保護の観点からIMO(国
際海事機関)で定められた条約上の諸規定の遵守等があげられる。
このため、以下の施策を推進する。
(1) モーダルシフト推進策
@
海陸一貫輸送の観点から、モーダルシフト推進のため、引き続き調査研究を
行うとともに海事振興連盟内航分科会、グリーン物流パートナーシップ会議等各
種協議会や日本物流団体連合会の活動等を通じ関係者の理解と協力を要請す
る。
A
国が推進するグリーン物流パートナーシップ会議で行っているグリーン物流モ
デル事業及び普及事業の提案募集等に海運事業者が積極的に参加するよう周
知に努める。
B
モーダルシフト推進に関する既往の研究成果を踏まえ、モーダルシフト推進に
資する税制上の特例措置、港湾設備、アクセス道路等インフラ整備及び港湾荷
役の改善等について行政の支援措置及び関係業界の理解と協力を要請する。
C
荷主ニーズに的確に対応するため、長距離フェリー協会と連携しモーダルシフ
ト船輸送量の把握に努めるとともに、国土交通省に設置された海上輸送モーダ
ルシフト推進検討会等を通じ、荷主業界、トラック業界、貨物利用運送業界等へ
理解と協力を求める活動を行う。
(2) 外航コンテナ二次輸送推進策
極東諸港接続に流失している日本輸出入コンテナ貨物について、ナイコウセン
活用による国内接続への転換が図られるよう、引き続き国及び関係者の理解と
協力を要請する。
また、内航船による外航コンテナにジ輸送量の実績を引き続き把握するととも
に、国土交通省内に設置された「海上輸送モーダルシフト推進検討会」からの要
請に応じ、同調査結果を継続的に報告する。
(3) 静脈物流の推進
静脈物流の陸上から海上運送へのシフトを促進するため、海上輸送の信頼性・
利便性と運送手段である船舶に係る事項についての規制緩和等具体的な改善の
必要性を説明するパンフレットを作成し、荷主、荷主団体、地方自治体を含む関
係当局の理解と協力を要請する。
また、内航船舶による循環資源の海上実態調査を実施するとともに、リサイクル
ポート推進協議会等に参画し、内航海運の利用を促進するための対応策等の確
立に努め、必要な国の支援措置を要請する。
(4) 各種環境対策の推進
@
窒素酸化物等の削減のための同対応機器の搭載等と油タンカー・ケミカル船
等のダブルハル化による海洋汚染の防止に努める等、条約の順守のための啓
蒙に努める。
A 「内航船の廃棄物の処理と受入施設に関する調査研究」並びに「内航ケミカル
タンカーの廃棄物の処理と受入施設に関する調査研究」が終了したのに伴い、
本年度は具体的対策の実施に向けて、引き続き行政当局との協議を行う。
また、ナイコウセンの廃棄物の陸揚げ処理は、海防法ではなく廃掃法(廃棄物
の処理及び清掃に関する法律)に従わねばならず、実際の陸揚げ処理は地方
組合の関与が不可欠であるため、地方組合支部等の自主的な取り組みに対
し、支援を行う。
B 改正省エネ法の制定等
平成18年4月1日より改正省エネルギー法が実施され、内航輸送事業者も運
航船腹量2万総トン以上のものは、省エネルギー計画の策定とエネルギー使用
量の定期報告が義務づけられる。同報告は平成19年6月までに提出するとな
っているがこの間、荷主とのかかわり等について混乱を避けるために、引き続き
必要に応じ説明会を開催し、同法の円滑な実施に努める。
内航海運業におけるグリーン経営認証制度を積極的に活用し、企業単位とし
ての環境保全、二酸化炭素の削減及び改善活動が行われるよう同制度の周知
に努める。
C
日本経済団体連合会の地球温暖化対策ワーキンググループに参画し、業界
団体として数値目標の削減等、積極的に関与する。
D OPRC―HNS条約関係
1995年に発効した油による汚染に関わる準備・対応及び協力に関する国際
条約(OPRC条約)に加え、2008年4月1日にはケミカルタンカー及び白油タン
カーを対象とした汚染に関わる準備・対応及び協力に関する国際条約(HNS条
約)への対応のために国内法「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」
の一部改正が実施されることになった。
全国(特定海域、一般海域)に基地を整備する費用、体制維持費(総計6.6
億円)のうち、2.8億円が内・外航船舶所有者の負担となったが、今後、HNS
条約(ケミカル等)を対象とした荷主との間で、新しいHNS防除体制の確立に向
けた協議を行う。
HNS条約体制整備が軌道に乗ったあと、OPRCに代表される特定油タンカー
について、オイルフェンスの防除資材の備え置きを必要としない安全運航体制
の確立に向けて、関係者との協議に取り組む。
4.カボタージュ制度の堅持
カボタージュ制度については、国防及び産業政策の観点から、アメリカ、欧州、
アジア等大多数の海運国で実施されている制度であり、わが国においても同制度
の堅持が国策上必要である。
カボタージュの緩和は、内航海運の存亡に係わる問題であり、かつ国防及び産
業政策の観点からも国策に反するものとして断固反対するとともに、同制度の堅
持について関係者の理解と協力を得るよう努める。
5.違反船対策
平成16年度に制定された「積載トン数の確認等に係る正常化処理要領」に基づ
く措置を継続して実施するとともに、関係法令等の違反を防止するため、監査・調
査員によるモニター制度の活用を通じその把握に努めるとともに、必要に応じ違
反船の排除を当局に求める。
6.国民の安全確保への寄与
大規模地震等災害時及び有事には緊急海上輸送支援等の要請に速やかに対
応するとともにテロ活動、領海侵犯、密輸等海上の保安に係る事象に対しては、
監視協力等を通じ国民の安全の確保に寄与する。
7.広報活動
特に、次の事項について広報活動の充実を図る。
@
一般国民の内航海運への理解を促進するため、ホームページの積極的な活
用を図るとともに、パンフレット、一般紙、業界紙等の活用を図る。
A 「e―内航」を組合員への重要な伝達手段として捉え、理事会決定、委員会決
定事項、各種調査結果等組合員の経営判断に役立つ情報の提供に努める。
また、関係法令の改正・当局からの関連通達等については、「e―内航」等を
通じ速やかな組合員等への周知を図る。
B 総連合会及び5組合(連合会を含む)並びに個別の事業者との間の迅速な情
報伝達と業務軽減を図るため、E-mailの活用及びコンピュータシステムのネット
ワーク化を推進する。
W 所要資金の調達及び賦課金の賦課
1.内航海運暫定措置事業所要資金の調達
解撤等交付金の交付に必要な資金は、建造納付金、鉄道・運輸機構からの借
入金及び交付金の交付予定事業者が拠出する資金をもって充当する。
暫定措置事業の適正な運用を確保するため、資金運用は、資金管理計画に基
づいて行う。
2.経営基盤強化対策及びその他の諸対策のための資金の調達
上記のU 経営基盤強化対策の推進及びV その他の諸対策に必要な所要資
金については、次により調達する。
@ 構造改善対策賦課金
A 会費、補助金、手数料
B その他納付金等
3.借入金に対する保証等
総連合会の所要資金の借入れについては、必要に応じ(財)内航海運安定基金
の保証等を得るものとする。
また、内航海運暫定措置事業に必要な所要資金の借入れについては、総連合
会及び5組合は同事業の円滑な推進に尽力するものとし、鉄道・運輸機構からの
総連合会の借入れについては、5組合は連帯保証を行うものとする。
附則(平成18年6月22日)
この要綱は、平成18年4月1日から実施する。
ただし、関係規定の設定または改正の必要のあるものは、その設定または改正
の日(国土交通大臣の認可を要するものは、認可のあった日)から実施する。
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