日本内航海運組合総連合会の意見
内航海運行政の取り組むべき課題(案)への対応について T.全般について @ 内航海運業界にとり多くの重要な事項もあり、具体案作成に際しては、前広に 情報を開示し、前広に意志疎通を図り、業界意見を尊重されることが必要である。 また、重要な事項については、特に時間かけて検討すべきである。 なお、各種法改正の時期については、船員法等の改正を放置したまま内航海運 業法の改正のみ、先行することのないようにされたい。 A 規制緩和は、特に暫定措置事業を円滑に実施する等、内航海運市場の環境整 備を先行して実施し、定着状況を見た上で検討されるべきである。 B 「U より効率的で安全かつ環境に優しい輸送サービスの構築」については、内 容的には、現に外部の委員会等で検討中のもの、今後検討会を早期に立ち上げて 対応するもの等が混在するなど、課題の多くは内容が包括的で具体性に欠けてい るが、総じて、提言の方向については特段の異論はない。ただし、各テーマの具体 化にあたっては、検討の場を設け業界の意見を充分に取り入れてもらうことを明記 してほしい。 U.「T 健全かつ自由な事業活動を促す市場環境の整備」について 1.参入規制について ◇許可制から登録制 ○ 許可制から登録制への移行理由が明確でなく、また、登録の要件が未定とのこ とであるので、内航海運業の秩序維持が確保できるか判断ができかねることから、 ただちに賛成はしかねる。 ○ 登録制になると非組合員化が進み、暫定措置事業の推進に支障を及ぼすことが 懸念される。 ○ 100総トン未満は登録も要さない場合は、積荷の実態が数千トン単位であるプッ シャー・バージはいったいとして取り扱う等の歯止め策が必要である。なお、船員法 等安全規制法令においても、実態に合致した制度に改善されたい。 2.船舶管理会社について ◇船舶管理会社制度の整備 ○ 船舶と船員管理が適正な形で確保することができるため、安全輸送の観点およ び協業化を推進する観点より大いに望ましい。 ○ 船舶管理会社の内航海運業法上の位置づけ、特に船員配乗業務の位置づけ (船員職業安定法を改正し、船員派遣業務を可能とすること等)を明確にしておく必 要がある。 3.市場機能について 【運送約款に係わる事項】 ◇オペレーターの運送約款の届出・変更命令制度の整備及び標準運送約款の作成 ○ 一般的には、運送約款は荷主保護のためのものであるが、強い荷主から弱者た る事業者を護る趣旨からはなじまない。インダストリアル・キャリアの取引は、現在 のチャーター・パーティで十分であり、運送約款の作成に行政の関与は必要ない。 ○ ただし、タンカー等における荷役に関する実態からすると、責任関係を明確にす るために標準約款制度等は有意義である。分野を限定して制度化が望ましい。 【その他の市場機能の整備に係る事項】 ◇適正取引ガイドライン(仮称)の整備 ○ 不公正な取引を是正するために、内航海運業の実態に即した、かつ実効のある ガイドラインを早急に作成されたい。 【船腹状況、貨物需給状況に係わる事項】 ◇適正船腹量告示の廃止 ○ 内航海運業界及び関係団体・関係者への指針を与えるものであり、廃止せず残 すべきである。 ◇最高限度量の設定規制の廃止 ○ 著しい過剰船腹による混乱を生じたときのための緊急避難制度(セーフティネッ ト)として残すべきである。 ◇標準運賃・用船料規制(設定・告示・勧告)の廃止 ○ 緊急避難制度として残すべきである。 ◇船腹需給状況、運賃・用船料水準等情報開示 ○ 運賃・用船料の市況の把握の仕方によっては、個々の事業者への介入の恐れ や過度の負担になるので、システムを工夫する必要がある。 4.輸送の安全の確保 ◇船舶管理規定(仮称)の届出・変更命令制度の整備及び事業活動の是正措置を命 ずる制度の整備 ○ 事業者の負担が加重にならないようにすべきである。 例えば、ISM取得済みもしくはそれに準ずるものは適用除外とすること。 意見統一に至らなかった課題 ◇市場機能に係る課題全般について ○ 競争的な市場機能を整備するには、荷主企業を頂点とする現在のピラミッド型の 市場構造を大胆に改善する必要がある。運送約款、取引ガイドラインの整備という 手法で足りるとは考えられない。(大方の組合の意見) ○ 国土交通省(案)の冒頭「荷主企業を頂点とするピラミッド型の市場構造が契約 関係の透明性に欠け、意欲ある事業者の積極的な参入の障害になっている面も少 なくない。」との記述があるが、この構造は、安定輸送・安全輸送サービスを提供 し、輸送責任を完遂するために必然的に構築された仕組みであり、今後、参入規制 の緩和や公正な取引関係の構築が明確化されても、この構造が大きく変わること はないと考える。(内航輸送組合の意見) ◇オペレーター・オーナーの事業区分の廃止 【賛成意見】 ○ 競争条件をオペレーターと同一にすることにより、オーナーの地位向上を図ること ができ、事業区分の廃止は必要である。ただし、過当競争を抑制するために何らか の手立ては必要である。 【反対意見】 ○ マーケットをかき乱し事業者間の過当競争をあおるだけである。荷主は従来のオ ペレーターのみに絞って取引するだけであり、実質的に変化は生じない。 ◇その他委員会で提起された見直すべき問題 ○連続トリップチャーターの禁止(通達) ○再用船の禁止(通達) (大型組合からの提案。全海運は反対。) V.「U より効率的で安全かつ環境に優しい輸送サービスについて」 1.競争力のある高度かつ効率的な輸送サービスについて (1)新技術の開発・普及 ◇次世代内航船(スーパーエコシップ)の早期の研究開発及び普及に向けた環境整備 ○ 船舶の開発にも建造コストを意識しつつ同時に、物流全体としてコスト削減を図る ことができることを目的に、開発・普及を図ることを明記してほしい。 ◇高度船舶安全管理システムの早期の研究開発および普及に向けた環境整備 ○ 内航海運業界では、電気推進方式船舶及びIT技術を活用した舶用機関等遠隔 監視・診断システム、陸上支援システム等について、既に実用化され活用されてい るので、それら内容を参考として、官民一体となって本件の構築を図ることが望まし い。 (2)社会的規制の見直し ア、船舶の性能・構造要件に関する規制の見直し ◇土・日等の船舶検査の充実 ○ 船舶検査は、運輸支局の統廃合もあり、充分対応できていないので、NK等民間 への委託を検討すべきである。 ○ 沿海航行区域の拡大等沿海区域航行区域の規制緩和及び検査間隔の延長など 検査に係る規制緩和も明記してほしい。 イ、船員の乗り組み体制等に関する規制の見直し ◇登録公認制(仮称)の導入 ○ 船員保険法上の手続きが煩雑であるので、簡素化してほしい。また、公認制度の 廃止を検討してほしい。 ウ、技術革新に伴う社会的規制の見直し ◇新規追加事項 ○ 既存の船舶についても、エンジン室のM0化・メンテナンスフリー船等技術革新は 進捗しているので、船員の乗り組み体制のあり方を検討してほしい。 ○ 技術革新を伴う船舶建造の促進を図るため、新たに取り組む事業者への特典に ついて官民一体のもとで検討してほしい。 2.良質な輸送サービスの円滑な提供体制の確保 ◇求人・求職情報の電子申請化、求人・求職情報のデーターベース化等電子化システ ムの構築 ○ 公共職業安定所(ハローワーク)とリンクし、公共職業安定所においても船員に係 る求人・求職情報を検索できるようにしてほしい。 3.全体効率的な物流システムの充実 ◇海運に係る第二種利用運送事業を可能とする制度の整備 ○ 内航海運の一層の利用促進につながるように推進してほしい。 ◇リサイクルポートの指定 ○ 静脈物流貨物の取り扱いについては、関係省庁との連携をとること及び各地方自 治体で異なる取り扱い規定及び運用を統一すべきである。 ○ 産業廃棄物とリサイクル材の区別を明確にすべきである。 |