全日本海員組合の意見


   次世代内航懇談会への意見について

T 健全かつ自由な事業活動を促す市場環境の整備について

 「基本的な考え方」ならびに「事業展開の多様化、新規参入等競争の促進」のなかで、コストの低廉化、輸送コストの低減への指向性が示されている。海陸輸送モードのなかで、内航海運としてのコスト競争力をつけていくこと自体に異論はないが、内航海運の現状、特に船員労働の実態はコスト至上主義といっても過言ではない内航海運業界において、厳しい気象・海象にさらされ昼夜を問わず働く一番弱い立場の船員、なかでも未組織船員の分野にその大半がしわ寄せされ、極めて劣悪な労働環境となっている。

 内航海運の将来ビジョンというのであれば、業界を現場で支える船員が置かれている実態から目をそらさず、あるべき方向性を打ち出すべきであり、コスト低減を目指すというのであれば、その前提条件として船員対策が不可欠であることを記述すべきではないかと考えます。

 また、「船舶管理会社に係る制度の整備」のなかで、船舶管理会社が万能の機器のごとくその方向性を是としているが、その位置づけさえも明確にされていないなかで、有効な手段と位置づけることは問題ありと言わざるを得ない。船舶所有者として船員の雇用責任の所在を明らかにしたうえで、その方向性を定めるべきではないかと考えます。

U より効率的で安全かつ環境に優しい輸送サービスの構築について

 次世代内航船(スーパーエコシップ)あるいはテクノスーパーライナーへの研究開発、普及推進が掲げられているが、すでに稼動中の後者については、これまでの実証実験に関する実績評価に加え、内航海運における市場性、経済性についても検証すべきではないかと考えます。スーパーエコシップは、船員の立場からもすばらしい画期的な新型船として期待されています。これを実現し、活用していけるものとするためにも、テクノスーパーライナーの前述の検証をお願いしたい。

 次に、船員の乗り組み体制等に関する規制の見直しについて、内航海運の現状認識で若干触れられてはいますが、内航船の配乗実態について、特に未組織分野では、関係法令に基づき乗り組み定員が届けられてはいるが、実態はおおよそそれとかけ離れた内容となっています。言い換えれば、現行乗り組み基準が実態を無視し安易に見直しされれば、船舶の安全航海、船員の労働環境は崩壊するということになります。今後関係者による検討を進めるということでありますが、こうした実情を関係者の共通ります認識とした上で、検討に着手することを要望いたします。